【2026年改正対応】原状回復ガイドラインと壁紙費用の正しい線引き

【2026年時点の整理】原状回復ガイドラインと壁紙費用の正しい線引き
「退去時の壁紙費用、入居者と揉めた…」
「原状回復ガイドライン、読んだけどわからない…」
賃貸オーナー・管理会社の皆さん、原状回復トラブル、経験ありませんか?
この記事では、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の考え方をベースに、壁紙(クロス)費用の“線引き”をわかりやすく整理します。
※本記事は一般的な解説で、個別案件は契約内容・損耗状況・判例等で結論が変わることがあります。
原状回復ガイドラインとは?
国土交通省が示す「トラブル防止の指針」
正式名称
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
目的
退去時の原状回復費用負担をめぐるトラブルを減らすために、貸主・借主の負担範囲の基本的な考え方や事例を示したものです。
原状回復の基本原則(超重要)
① 経年劣化・通常損耗 → 原則「貸主負担」
時間の経過や通常の生活で自然に発生する損耗。
例
- 壁紙の日焼け
- 壁紙の自然な変色・くすみ
- 画鋲の穴(少数・通常範囲)
② 故意・過失・通常を超える使用 → 原則「借主負担」
入居者の不注意・故意、通常を超える使い方で発生した損耗。
例
- タバコのヤニ汚れ・臭いの付着(室全体に及ぶレベル)
- ペットの引っかき傷
- 落書き
- 大量の釘穴・ビス穴
壁紙(クロス)費用の負担:ケース別の線引き
ケース① 経年劣化による黄ばみ(タバコ無し)
状況例
- 入居:5年
- 喫煙なし
- 自然な変色
結論
- 原則:貸主負担
ケース② タバコのヤニ汚れ・臭い(部屋全体)
状況例
- 入居:3年
- 喫煙あり
- クロスがヤニで変色+臭いが付着
結論
- 原則:借主負担(張替え/クリーニング)
※「室全体に及ぶ場合」に、室全体のクリーニングまたは張替えを借主負担とする考え方が示されています。
ケース③ 画鋲の穴(数個)
状況例
- 画鋲でポスター等(5〜6箇所)
結論
- 原則:貸主負担(通常損耗の範囲)
ケース④ 釘穴・ビス穴(多数)
状況例
- 壁面に多数の釘穴(棚・造作等)
結論
- 原則:借主負担(ただし経過年数の考慮が入ることが多い)
ケース⑤ ペットの引っかき傷(腰高までなど)
状況例
- ペット可物件
- 引っかき傷が広範囲
結論
- 原則:借主負担(通常損耗を超える損耗)
※ただし、契約条件(特約)や経過年数、損耗の程度で精算は変動します。
クロスの「経過年数(減価償却)」の考え方
ガイドラインでは、壁・天井(クロス)について 「6年で残存価値1円となるような負担割合」 の考え方が示されています。
目安:入居年数ごとの残存価値イメージ(直線償却)
| 経過年数 | 残存価値イメージ | 借主負担の上限イメージ(※借主原因の損耗時) |
|---|---|---|
| 1年 | 約83% | 約83% |
| 2年 | 約67% | 約67% |
| 3年 | 約50% | 約50% |
| 4年 | 約33% | 約33% |
| 5年 | 約17% | 約17% |
| 6年 | ほぼ0(残存価値1円) | ほぼ0(残存価値相当) |
※「借主負担=常にこの割合」ではなく、借主原因の損耗に対して“経過年数を考慮する”という整理です。
※毀損箇所が部分でも、施工単位の都合で「一面」になるなど、数量・範囲の争点が出ます。
計算例(ヤニ汚れ等で張替えが必要なケース)
状況
- 入居3年
- 張替え費用:60,000円
- 借主原因(例:ヤニで室全体のクロス変色)
例の考え方
- 60,000円 × 50%(3年経過の残存価値イメージ)
= 30,000円(借主負担の目安)
トラブルを防ぐ「3つの実務対策」
対策① 入居時・退去時の記録を徹底(写真・動画)
やること
- 入居前:壁紙・床・建具の状態を撮影(全景+アップ)
- 退去後:損耗箇所を撮影(位置がわかる引き+拡大)
- 日付がわかる形で保管(ファイル名・台帳など)
効果
- 「入居時からあった」論争を止められる
対策② 契約書・特約を“説明できる文章”にする
書くべき観点(例)
- 通常損耗/特別損耗の考え方
- 喫煙・ペット・落書き等の扱い
- 退去精算の算定方法(経過年数の考慮など)
※特約は有効要件(合理性・明確性・説明等)を満たす必要があるため、テンプレ貼り付けではなく運用前提で整備が安全です。
対策③ 見積・精算明細は「根拠が伝わる形」にする
最低限そろえる
- 面積(㎡)・数量
- 単価
- 工事項目(張替え/部分補修/クリーニング等)
- 経過年数の扱い(控除の考え方)
よくあるトラブル例(超短縮)
例① 入居6年以上でクロス全額請求 → 反発される
→ 経過年数(6年)を踏まえると、全額請求は説明が難しくなるケースが多い。
例② 借主原因でも“経年控除ゼロ”で請求 → 交渉が長期化
→ 経過年数を考慮した説明(按分)がある方が合意形成しやすい。
まとめ:壁紙の線引きは「原因 × 経過年数 × 範囲」
ポイントは3つだけです。
- 経年劣化・通常損耗は貸主負担が基本
- 借主原因の損耗は借主負担が基本(ただし経過年数を考慮)
- 施工範囲(部分か一面か室全体か)と明細根拠がトラブルを左右
退去精算は「正しさ」だけでなく「説明のしやすさ」が重要です。
写真・明細・算定ロジックを整えて、揉めない運用に寄せましょう。
今すぐできる3つのアクション
1️⃣ 入退去の撮影テンプレ(撮影箇所リスト)を作る
2️⃣ 精算明細に「㎡・単価・経過年数の控除」を入れる
3️⃣ 喫煙・ペット・DIY造作の特約を“説明できる文章”に整える

